
親の介護が始まると、兄弟姉妹で介護をどのように分けるのか、費用を誰のお金から出すのか、迷うことがあります。全員で同じ量を担うことが難しい場合に、何をどこまで決めればよいのでしょうか。
私は母を約1年間自宅で介護し、日常介護から連絡や手続きまで基本的に担っていました。仕事などで対応できないときは姉に頼むという、均等ではない分担でした。姉とは介護について揉めることはなく、電話やLINEで情報を共有していました。
この経験から、分担を同じ量にそろえることよりも、「役割」「費用の出どころ」「支払い手続きの担当」を明確にし、状況を共有することが大切だと考えています。
●この記事でわかること
- 兄弟姉妹の介護分担で、均等さより先に確認したいこと
- 私と姉が実際に行っていた介護の分担
- 話し合っておきたい「役割・費用の出どころ・支払い担当」
- 電話やLINEによる情報共有と、施設入所時の判断の仕方
- 家族だけで決めにくいときの相談先と、親名義の預金を扱う際の注意
家庭によって、介護を担える範囲や費用の事情は異なります。私たちの実際の分担と費用管理を一例として、家族で何を話し合い、どこまで決めておくかを整理します。
兄弟の介護分担は「均等」より「担当を明確にする」

兄弟姉妹で親を介護するとき、全員が同じ量を担うことにこだわるよりも、誰が何をするのかを明確にすることが大切だと、私は考えています。
仕事や家庭の状況は人によって違います。必要な介護や手続きを整理し、それぞれが実際に担える役割を話し合う方が現実的です。
必要な介護と手続きを先に書き出す
役割を決める前に、必要なことを具体的に書き出します。家族が担うのは、本人のそばで行う介助だけではありません。
- 食事、排泄、見守りなどの日常介護
- 掃除や買い物などの家事
- 通院への対応
- ケアマネジャーとの連絡
- 介護に関係する手続きや支払い
こうして並べると、一人へ集まっている負担や、直接介護を多く担えない人にもできる役割が見えやすくなります。
それぞれができることと難しいことを確かめる
必要なことを整理したら、誰が何を担当できるかを話し合います。できることだけでなく、仕事や家庭の事情から難しいことも伝えた方がよいと思います。
親の状態や家族の生活が変われば、必要な介護と担える範囲も変わります。誰かの負担が大きくなったときは、分担を見直す必要があります。
私と姉も、同じ量の介護を分けていたわけではありません。
母の在宅介護は、基本的に私が担っていた

母を自宅で介護した約1年間、食事や排泄などの日常介護から、外部との連絡や手続きまで、基本的には私が担っていました。私が仕事などで対応できないときに姉へ頼み、姉が時折手伝うという分担でした。
日常介護から連絡・手続きまで私が担当した
私が行っていたのは、食事、排泄、見守り、掃除、買い物、通院への対応、ケアマネジャーとの連絡、介護に関係する各種手続きなどです。これらを基本的に私が担当し、在宅介護の中心になる役割を担っていました。
仕事で対応できないときは姉に頼んだ
私一人だけで、いつでもすべてに対応できたわけではありません。仕事などで都合が悪いときは姉に頼み、姉も時折、介護を手伝ってくれました。
姉は結婚して家を出ており、自分の家庭のことでも忙しくしていました。介護に関わりにくい特別な事情があったわけではありませんが、私と同じように日常的な介護を担う状況ではありませんでした。
この経験から、兄弟姉妹の間で最初に話し合っておいた方がよいと考えていることが三つあります。
話し合っておきたいのは役割・費用・支払い担当

私が話し合っておいた方がよいと考えているのは、次の三つです。
- 誰がどの役割を担うか
- 介護費用を誰のお金から出すか
- 誰が支払い手続きを担当するか
三つは関係していますが、それぞれ別の問題です。一度決めた後も、介護される人の状態や家族の生活が変われば見直します。
誰がどの役割を担うか
役割には、直接介護のほか、買い物、通院への対応、ケアマネジャーとの連絡、各種手続きなども含まれます。一人が日常介護を多く担い、別の人が連絡や手続きを受け持つ方法もあります。
「できるときに手伝う」だけでなく、主に担当する人と、その人が対応できないときに頼む相手まで決めておけば、助けが必要になったときに動きやすくなります。
介護費用を誰のお金から出すか
介護費用を親本人の収入や資産から出すのか、それだけでは足りない場合に家族が負担するのかを確認します。家族の負担が必要なら、誰がどの費用をどこまで負担するのかも決めておきます。
私は、特に費用面に問題がある場合は、後になって揉める可能性が高くなると考えています。支払いが始まる前から話し合っておいた方がよいと思います。
誰が支払い手続きを担当するか
費用の出どころを決めることと、請求内容を確認して実際に支払う人を決めることは別です。支払った内容を家族へ共有する担当も決めておけば、お金の流れが分かりやすくなります。
親名義の預金を使う場合は、家族内で支払い担当を決めただけで自由に扱えるわけではありません。本人の意思と金融機関の取扱いを確認する必要があります。詳しくは、全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方」を確認してください。
私の場合、費用の出どころは母の年金で、支払い手続きは私が担当しました。
介護費用は母の年金から払い、私が手続きをした

母の在宅介護中も老健への入所後も、介護にかかる費用は母の年金受取口座から支払っていました。費用を出していたのは母で、口座を管理して実際の支払い手続きをしていたのは私です。
母の年金は手取りで月12万~13万円ほどあり、介護に必要な費用を賄うことができました。これは私たちの場合の金額と結果であり、介護費用の一般的な目安ではありません。
姉との立替や後日の精算はなかった
母の年金から支払っていたのは、介護サービスの自己負担、老健の利用料、おむつや日用品、通院費、食費などです。これらは私が覚えている主なもので、すべての支出を網羅したものではありません。
母の年金で費用を賄えたため、私や姉を含む家族が立て替えたり、後から兄弟間で精算したりすることはありませんでした。私は姉と話し合いながら、必要な支払いを行っていました。
親名義の預金は家族の合意だけで自由に扱えるものではない
私は母の年金受取口座を管理し、介護に必要な支払いを担当していました。手続きが必要な場合は、ケアマネジャーの助言も受けながら進めました。
銀行預金は基本的に預金者本人の資産であり、払出しには本人の意思確認が必要です。家族というだけで自由に払い出せるものではなく、金融機関によって取扱いが異なる場合もあります。全国銀行協会も、各銀行に一律の対応を求めるものではなく、個別の状況により異なる対応があり得るとしています。全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方」
本人の意思確認ができず、生活費や介護施設費などのために払出しが必要になった場合は、まず取引銀行へ相談することが全国銀行協会から案内されています。全国銀行協会「預金者ご本人の意思確認ができない場合における預金の引出しに関するご案内」
親名義の預金の取扱いや代理手続きは、本人の意思確認、判断能力、金融機関の取扱いによって異なります。必要な場合は取引銀行や地域の相談窓口へ確認してください。
姉とは電話やLINEで介護状況を共有していた

母の介護では私が多くの役割を担いましたが、姉との間で介護方針や費用について揉めることはありませんでした。普段から電話やLINEで連絡を取り、介護についてよく情報交換していました。
普段から情報を伝えておくことが大切だった
母の介護について伝える必要があるときは、電話やLINEで姉へ連絡していました。支払いについても、姉と話し合いながら進めました。
介護状況や支払いを日頃から共有し、必要なときに話し合えるようにしておくことは、家族間の行き違いを減らす一つの方法になると考えています。
施設入所は姉に状況を伝え、私が最終判断した
母の施設入所を考えたときも、私は姉へ母の状況を伝えました。姉からは「任せる」と言われ、そのうえで私が最終的に入所を判断しました。
私たちの場合は、状況を共有したうえで、実際の介護を主に担っていた私が判断する形でした。
揉めなかった理由を今振り返って考える
姉と揉めなかった理由を今振り返ると、介護について普段から情報交換していたことが大きかったと考えています。
それに加えて、母の年金で介護費用を賄うことができ、家族間の立替や精算がなかったことも関係していたと思います。これは私たち家族についての振り返りであり、家庭によって事情は異なります。
家族だけで決めにくいときは相談先を頼る

兄弟姉妹だけでは役割や費用の話がまとまらない場合や、何を決めればよいのか分からない場合は、介護の相談先を頼る方法があります。
すでに介護サービスを利用しているなら担当ケアマネジャーへ、まだ担当者がいない、または相談先が分からないなら地域包括支援センターへ相談することが考えられます。
担当ケアマネジャーへ状況を伝える
担当ケアマネジャーがいる場合は、親の状態だけでなく、家族が現在担っていることや、仕事・生活上できないことも具体的に伝えます。誰か一人へ負担が集まっていることや、役割・費用について決められず困っていることも相談してよいと思います。
現在の分担、費用の出どころ、支払い担当、まだ決まっていないことを整理して伝えると、相談したい内容が明確になります。
地域包括支援センターへ相談する
厚生労働省の家族介護者向け案内では、地域包括支援センターは、すべての市町村に設置されている介護の総合相談窓口とされています。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが相談に対応し、必要に応じてケアマネジャーの紹介も行います。
相談先は、介護が必要な人の居住地を担当するセンターが基本です。所在地は市町村のウェブサイトや介護サービス情報公表システムで確認できます。地域によって名称や窓口、支援内容が異なる場合があります。
家族だけで決めにくい場合は、まだ決まっていないことを整理して相談先へ伝え、次に取る行動を検討します。
よくある質問
Q:兄弟姉妹で介護量を同じにしなければ不公平ですか?
A: 同じ量にそろえることだけが、介護分担の方法ではありません。仕事、家庭、距離などを踏まえ、直接介護だけでなく、通院への対応、連絡、買い物、手続きなども含めて、各自が担える役割を決めます。親や家族の状況が変わったときは、分担を見直すことも必要です。
Q:親の収入だけで介護費用を賄えない場合はどうしますか?
A: まず、どの費用がどれだけ不足するのかを整理し、家族の負担が必要なら、誰がどの費用をどこまで負担できるかを話し合います。利用している介護サービスや費用については担当ケアマネジャーへ、担当者がいない場合などは地域包括支援センターへ相談する方法もあります。
Q:親名義の口座を、担当になった家族が自由に管理できますか?
A: 家族の間で担当を決めただけでは、親名義の預金を自由に扱えるとは限りません。預金は基本的に預金者本人の資産であり、本人の意思確認や金融機関の取扱いが関係します。本人の意思確認が難しく、介護費用などのために払出しが必要な場合は、全国銀行協会の案内にあるように、まず取引銀行へ相談してください。
Q:兄弟姉妹だけで話がまとまらないときは、どこへ相談できますか?
A: すでに担当ケアマネジャーがいる場合は、家族の分担や困っていることを具体的に伝えます。相談先が分からない場合は、介護が必要な人の居住地を担当する地域包括支援センターを確認します。名称や窓口、支援内容は地域によって異なる場合があります。
まとめ|均等より、役割と費用を曖昧にしない

兄弟姉妹による親の介護は、全員が同じ量を担うことよりも、必要なことと各自ができることを確認し、担当を明確にする方が現実的だと私は考えています。
私と姉も均等な分担ではありませんでしたが、介護状況と費用について情報を共有していました。
- 食事や排泄などの直接介護だけでなく、通院、買い物、連絡、手続き、支払いも役割として整理する
- 仕事や家庭の事情を踏まえ、それぞれができることと難しいことを伝える
- 「役割」「費用の出どころ」「支払い手続きの担当」を分けて決める
- 一度決めた分担も、親の状態や家族の生活が変われば見直す
- 介護状況や支払いについて、電話やLINEなどで日頃から共有する
- 家族だけで決めにくい場合は介護の相談先を頼り、親名義の預金は必要に応じて取引銀行へ確認する
私たちの場合、姉と揉めなかった背景には、普段から情報交換していたことに加え、母の年金で介護費用を賄え、家族間の立替や精算がなかったことも関係していたと考えています。これは私たち家族についての振り返りであり、家庭によって事情は異なります。
兄弟姉妹で同じ量を担うことよりも、負担と費用の流れを分かる形にしておくことが、話し合いの出発点になります。決めにくいことがあれば、その内容を整理して相談先へ伝えることもできます。
まずは家族で、「役割」「費用の出どころ」「支払い手続きの担当」を書き出して共有してみてください。家族だけで整理しにくい場合は地域包括支援センターや担当ケアマネジャーへ、親名義の預金の取扱いは取引銀行へ相談してください。
