
親の物忘れが増え、これまでできていた生活動作にも影響が出てくると、年齢による変化なのか、医療機関へ相談すべき状態なのか判断に迷います。本人が受診を嫌がれば、家族だけでどう説得すればよいのか悩むこともあります。
家族が認知症かどうかを決める必要はありません。かかりつけ医がいる場合は身近な相談先にでき、医療と介護の両面で迷う場合は地域包括支援センターへ相談できます。大切なのは、物忘れの回数だけでなく、いつから何が変わり、生活にどう影響しているのかを整理して伝えることです。
私も、脳梗塞後に母の発語や認知面が衰え、生活動作に影響が出てきたとき、かかりつけ医とケアマネジャーへ相談しました。ただし、母は受診を嫌がらなかったため、受診を拒む親への対応は私自身の体験ではありません。その部分は、公的機関や医療機関の情報を基に整理しています。
●この記事でわかること
- 親の物忘れを相談できる主な窓口
- 相談・受診前に記録しておきたい生活の変化
- 受診時に医師へ伝える内容と、本人の前で話しにくいときの対応
- 親が受診を嫌がる場合の伝え方と、家族だけで対応できないときの相談先
- 通常の物忘れ相談ではなく、救急要請を考えるべき変化
物忘れが徐々に進んでいる場合と、言葉や動作の異常が突然起きた場合では、取るべき対応が異なります。相談前の記録、受診時の伝え方、受診を嫌がるときの対応、救急要請を考える変化を順にたどりながら、親の今の状態に合う相談の進め方を整理します。
親の物忘れは、かかりつけ医か地域包括支援センターへ相談する

親の物忘れが気になり始めたら、かかりつけ医がいる場合は、まず相談先の候補になります。かかりつけ医がいない場合や、医療だけでなく今後の介護についても迷っている場合は、地域包括支援センターへ相談できます。
この段階で、家族が「認知症に違いない」と判断する必要はありません。物忘れの原因を家族だけで決めつけるのではなく、日常生活でどのような変化が起きているのかを整理して伝えることが、相談の第一歩になります。
かかりつけ医がいる場合は相談先にできる
親が普段から受診しているかかりつけ医がいるなら、「最近、物忘れが増えているように感じる」「以前はできていたことが難しくなってきた」と相談してみる方法があります。
厚生労働省も、認知症が疑われるときの主な相談先として、かかりつけ医、もの忘れ外来、認知症疾患医療センターなどを案内しています。
最初から家族だけで専門の医療機関を探すのではなく、身近な医師へ困っていることを伝え、次の相談先を一緒に考えてもらう方法があります。ただし、対応できる範囲や受診方法は医療機関によって異なります。
医療と介護の両面で迷うなら地域包括支援センターへ
「病院へ相談するほどなのか分からない」「生活面の支援も必要かもしれない」と迷う場合は、親が住んでいる地域の地域包括支援センターも相談先になります。
地域包括支援センターでは、高齢者の保健・医療・介護に関する相談を受け、必要に応じて認知症疾患医療センターや認知症初期集中支援チームなどの関係機関と連携しています。詳しい役割や相談先は、厚生労働省「認知症に関する相談先」で確認できます。
地域によって名称が異なる場合があるため、窓口が分からなければ、市区町村の高齢者福祉を担当する部署へ確認します。
私はかかりつけ医とケアマネジャーに相談した
私の母の場合は、脳梗塞後に発語や認知面が衰え、やがて生活動作にも影響が出てきました。
その変化について、私はかかりつけ医とケアマネジャーに相談しました。母にはすでに関わってくれている人がいたため、一から相談先を探すのではなく、母の状態を知っている相手へ話をすることができました。
母は受診そのものを嫌がったわけではありません。そのため、私の経験を「受診を拒む親への説得方法」として紹介することはできません。受診を嫌がる場合の対応は、私の体験と分けて、公的機関や医療機関の情報を基に紹介します。
相談前に、物忘れの回数より生活への影響を整理する

相談するときは、「最近よく忘れる」という印象だけでなく、いつから、どのような変化があり、生活にどの程度影響しているのかを整理します。
忘れた回数だけを数えても、加齢による変化なのか、医療機関への相談を考えたい状態なのかを家族だけで判断することはできません。本人を問い詰めたり試したりするより、普段の暮らしで起きた変化を事実として記録します。
加齢でも起こり得る物忘れと、相談を考えたい変化
物を置いた場所がすぐに出てこない、人の名前をとっさに思い出せないといった軽い物忘れは、加齢や注意力の低下などでも起こることがあります。
一方、国立長寿医療研究センターのQ&Aでは、次のような変化がある場合、専門医療機関への相談を勧めています。
- 物忘れが時々ではなく、繰り返し起きている
- 以前より症状が悪化している
- ヒントがあっても思い出せない
- 出来事の一部ではなく、体験そのものを忘れている
- 物忘れが日常生活に影響している
たとえば、食事の献立を思い出せないことと、食事をしたこと自体を忘れていることでは、変化の内容が異なります。
ただし、これらは家族が認知症を診断するための基準ではありません。「当てはまるから認知症だ」と決めつけず、相談を考えるための目安として扱います。
いつから・何が・どのくらい変わったかを記録する
相談前の記録では、難しい様式を作る必要はありません。次の点を、分かる範囲で書き留めます。
- いつ頃から気になり始めたか
- どのような出来事があったか
- 同じ変化がどのくらいの頻度で起きているか
- 以前より増えている、または悪化しているか
- 生活にどのような影響があるか
- 家族が何に困り、何を相談したいのか
「認知症になった」「何もできなくなった」と評価を書くのではなく、実際に見たことを具体的に残します。気づいたときに日付と出来事を書き留めるだけでも、医師や相談員へ状況を説明する材料になります。
受診時は日常生活で困っていることを具体的に伝える

医師へ相談するときは、「物忘れがひどい」「認知症かもしれない」という家族の評価だけでなく、実際に起きている変化を具体的に伝えます。
診察時間の中で思い出しながら話そうとすると、重要な出来事を伝え忘れることがあります。整理した記録から、特に気になる内容を短くまとめておくと説明しやすくなります。
医師へ伝えたい三つの情報
国立長寿医療研究センターの受診に関するQ&Aでは、初めて診察を受ける際に、次の点を医師へ伝えるよう案内しています。
- いつから、どのような変化があるのか
- 本人や家族が、日常生活の何に困っているのか
- 何を相談するために受診したのか
二回目以降は、前回から変わったことや、新たに難しくなった生活動作なども伝えます。
本人の前で話しにくい場合はメモを用意する
本人と一緒の診察では、家族が物忘れや生活上の失敗を説明しにくいことがあります。
その場合は、症状や生活上の変化をまとめたメモを事前に医師へ渡す方法があります。また、家族だけで医師へ説明できるか、医師、看護師、受付などへ相談する方法も示されています。
対応は医療機関によって異なるため、受診前に確認しておくと安心です。メモは本人に隠れて診断を進めるためではなく、家庭での状況を正確に伝える資料として使います。
親が受診を嫌がるときは、家族だけで説得し続けない

国立長寿医療研究センターは、必ず、すぐに受診へつなげられる方法はないとしています。そのうえで、本人が信頼する親族やかかりつけ医から勧めてもらうことや、地域包括支援センターへ相談する方法を案内しています。
私の母は受診を嫌がらなかったため、ここで紹介する方法は、私が母を説得した体験ではありません。
必ず受診につながる言葉はない
「認知症かもしれない」「忘れてばかりいるから検査が必要だ」と正面から指摘すると、本人が責められていると感じる可能性があります。
まず受診を拒む理由を決めつけず、本人の言い分を聞きます。そのうえで、家族の心配として率直に伝えます。
以下は、公的・医療機関の情報を踏まえて本記事で整理した言い換え例であり、公式資料の定型文や、受診を保証する言葉ではありません。
- 「最近の体調で気になることがあるから、いつもの先生に一緒に相談してみない?」
- 「認知症だと決めつけたいわけではなく、何か原因がないか確認しておきたい」
- 「私が心配しているので、一度相談に付き合ってほしい」
- 「これからも今の生活を続けるために、先生の話を聞いてみない?」
病名を隠してだますのではなく、本人を責めない形で、受診を勧める理由を伝える例です。一度断られた場合は、その場で言い負かそうとせず、時間を置いて改めて話す方法もあります。
信頼している人やかかりつけ医から伝えてもらう
家族からの言葉は受け入れられなくても、本人が信頼している親族や、普段から診てもらっているかかりつけ医の話なら聞ける場合があります。
家族から先にかかりつけ医へ状況を伝え、次の診察での話し方を相談する方法も考えられます。ただし、周囲から一斉に説得して本人を追い詰めないよう、誰から、どのタイミングで伝えてもらうかを整理します。
難しい場合は地域包括支援センターへ相談する
何度話しても受診を拒み、家族だけでは対応が難しい場合は、地域包括支援センターへ家族から相談できます。
地域によっては、認知症初期集中支援チームにつないでもらえる場合があります。このチームは、受診や介護サービスの利用につながっていない人などを訪問し、状況の確認、医療・介護への接続、家族支援を行います。詳しい仕組みは、厚生労働省「主な認知症施策について」や国立長寿医療研究センターの解説で確認できます。
利用条件や依頼方法には地域差があるため、地域包括支援センターや市区町村の高齢者福祉担当部署へ確認します。
突然の言葉や動作の異常は、通常の物忘れ相談と分けて考える

言葉や動作の異常が突然起きた場合は、認知症による物忘れだと決めつけず、救急対応が必要な病気を疑うことが重要です。
顔・腕・言葉の異常が突然起きたら救急車を呼ぶ
厚生労働省は、次のような症状が一つでも突然起きた場合、脳卒中を疑って、すぐに救急車を呼ぶよう案内しています。
- 顔の片側がゆがむ
- 片側の腕や手に力が入らない
- ろれつが回らない
- 言葉が出てこない
- 相手の言葉を理解できない
通常の物忘れ相談として様子を見続けず、119番へ連絡します。詳しくは、厚生労働省「脳卒中ってなぁに?」をご確認ください。
徐々に進む変化は記録して相談につなげる
以前から続いている物忘れや、生活動作の変化が徐々に進んでいる場合は、気づいた変化を記録し、かかりつけ医や地域包括支援センターへ相談します。
家族が原因を決めるのではなく、突然起きた緊急性の高い変化と、時間をかけて現れてきた生活上の変化を分け、それぞれに合った相談先へつなげます。
親の物忘れに関するよくある質問
Q:親本人がいなくても、家族だけで相談できますか?
A:地域包括支援センターでは、本人だけでなく家族からの相談も受けています。親が受診を嫌がっている場合も、まず家族が状況を伝え、利用できる支援について相談できます。
Q:すでにケアマネジャーがいる場合は相談してもよいですか?
A:私は、母の生活動作に影響が出てきたとき、かかりつけ医とケアマネジャーへ相談しました。すでに担当のケアマネジャーがいる場合は、生活上の変化を伝える相談先の一つにできます。ただし、症状や受診についての医学的な判断は、かかりつけ医などへ相談してください。
Q:物忘れがあれば、認知症と考えるべきですか?
A:軽い物忘れは、加齢や注意力の低下などでも起こることがあります。物忘れが繰り返し起きる、悪化している、体験そのものを忘れる、生活に影響している場合などは、家族だけで認知症と決めつけず、医療機関へ相談してください。
Q:受診を嫌がる親を、無理に病院へ連れて行くべきですか?
A:必ず、すぐに受診へつなげられる方法はありません。本人が信頼している親族やかかりつけ医から伝えてもらう、時間を置いて話す、地域包括支援センターへ家族から相談する方法があります。
まとめ|家族だけで判断せず、生活の変化を相談先へ伝える

親の物忘れが気になっても、家族が原因や病名を決める必要はありません。
まず、いつから、どのような変化があり、生活の何に影響しているのかを記録します。かかりつけ医がいる場合は身近な相談先にできます。医療と介護の両面で迷う場合は、地域包括支援センターへ相談できます。
親が受診を嫌がるときも、責める言葉や家族だけでの説得を重ねるのではなく、本人が信頼する人や専門機関の力を借ります。必ず通用する言葉はありませんが、本人をだまさず、家族が心配していることを率直に伝える方法があります。
気になる変化があるなら、まず日付と具体的な出来事を一つだけでもメモしてみてください。その記録を持って、かかりつけ医または親が住んでいる地域の地域包括支援センターへ相談することが、次の対応を考える第一歩になります。
本記事は、家族介護の経験と公的・公式情報を基にした一般的な内容です。診断や個別の医学的判断は、医療機関などへご相談ください。詳しくは免責事項をご確認ください。
