
知っている顔なのに、名前だけがすぐに出てこない。約束や以前の会話、仕事で頼まれたことまで一瞬抜ける。こうした物忘れが増えると、「年齢のせいなのか、それとも認知症の始まりなのか」と不安になります。
私にも、俳優や久しぶりに会う知人だけでなく、まれに同僚や利用者の名前が出てこないことがあります。今のところ仕事や日常生活に大きな支障はありません。ただ、人の名前が出にくいことは加齢でも見られる一方、それだけで自分の状態を判断することはできません。忘れ方に加えて、頻度や生活・仕事への影響が変わっていないかを見ながら、その場での対処や相談を考える必要があります。
●この記事でわかること
- 顔は分かるのに名前が出てこないなど、私に起きている物忘れの具体例
- 加齢による物忘れと認知症による物忘れの典型的な違い
- 物忘れの変化に気づいたとき、相談を考える目安と相談先
- 名前が出てこない場面で、私が実際にしている対処
- 将来への不安を抱えながら、必要以上に深刻にならず暮らすための考え方
不安を必要以上に膨らませず、それでも変化を見過ごさないために、私自身の経験と公的機関の情報を基に、忘れ方の違いと対処・相談の考え方を順に見ていきます。
顔は分かるのに、名前だけが出てこないことが増えた

人の顔を見て「知っている人だ」と分かっているのに、その名前だけがぱっと出てこない。毎回ではありませんが、そんなことがたまにあります。
俳優や久しぶりに会う人の名前が出ない
俳優の顔を見たときや、普段は頻繁に会わない知人・友人に会ったとき、知っているはずの名前が記憶から飛んでしまうことがあります。顔には見覚えがあり、その人を知らないわけではありません。それでも名前だけが出てこないのです。
同僚や利用者の名前も、不意に出てこないことがまれにあります。毎日のように起きるわけではなく、仕事に支障が出るほどでもありませんが、名前が出ないと、自分の中で物忘れが増えてきたことを感じます。
約束や頼まれたことを忘れる場合もある
忘れるのは、人の名前だけではありません。約束していたことが抜けてしまったり、以前に話したことを持ち出されたとき、一瞬「何だったっけ」となる場合もあります。
仕事でも、自分がやるべきことや、誰かに頼まれたことを忘れてしまうことがあります。幸い、今のところは仕事や日常生活で実際に困るほど頻繁ではなく、重要なことを忘れるほどひどい状態でもありません。
支障の大きさとは別に、考える速さが落ち、物忘れが増えたと感じること自体には、やはり悲しさがあります。
人の名前が出ないだけで認知症とは決められない

人の名前がすぐに出てこないからといって、それだけで認知症だと決めることはできません。一方で、すべてを年齢のせいにしてよいとも限りません。この記事では、忘れ方や頻度だけでなく、生活や仕事への影響が以前と比べて変わっていないかも分けて考えます。
人名を思い出せないことは加齢でも見られる
国立長寿医療研究センターの「よくある質問・Q&A」では、人の名前がなかなか思い出せないことや、体験の一部を忘れることは、加齢による物忘れでも見られると説明しています。
加齢に伴う物忘れでは、出来事の一部を忘れても、手がかりがあれば思い出せることが多いとされています。これに対して、認知症による物忘れでは、体験した出来事そのものを忘れ、手がかりがあっても思い出せないことが特徴とされています。
また、認知症は記憶だけの問題ではありません。認知機能が持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障が出た状態を指し、段取り、時間や場所の把握、言葉、行動などに影響が表れる場合もあります。
これらは典型的な違いを理解するための説明であり、自分で診断するためのチェックリストではありません。私が経験している物忘れについても、この記事だけで「年齢によるものだから心配ない」と断定することはできません。
困り方が変わったら一度相談を考える
同じことを何度も聞く、体験した出来事そのものを忘れる、大切な物をなくすことが増える、これまでできていたことがうまくできなくなる、よく知っている道で迷うといった変化は、相談を考える目安として挙げられています。
一つでも当てはまれば認知症という意味ではありません。それでも、物忘れの頻度が増えたり、仕事や日常生活への影響が大きくなったりしたときは、年齢だけの問題と決めつけず、一度相談するという選択肢があります。
相談先としては、まずかかりつけ医があります。もの忘れ外来、脳神経内科、精神科、老年内科、認知症疾患医療センターなども選択肢です。どこへ相談すればよいか分からない場合は、厚生労働省が案内する地域包括支援センターでも相談できます。国立長寿医療研究センターは、認知症と診断される前の段階でも本人や家族が相談できると説明しています。
思い出せないときは、言い換えるか素直に尋ねる

名前が出てこないときは、その場で名前が必要なのか、後から確認しても間に合うのかによって、対処の仕方を変えています。
その場で必要なら、思い出せないことを伝える
別の言い方でその場をしのげる場合は、嘘にならない範囲で言い換えることがあります。私が言う「ごまかす」とは、事実ではないことを言う意味ではありません。
言い換えだけでは済まないときは、名前が出てこないことを素直に伝え、相手に尋ねます。思い出せないものは、無理に取り繕っても仕方がありません。その場で必要なら、正直に尋ねるしかないと思っています。
後で確認できるなら、人やスマートフォンで調べる
すぐに名前が分からなくても困らない場面なら、後で確認します。知っていそうな人に聞くこともあれば、スマートフォンで調べることもあります。
これは物忘れそのものをなくす方法ではなく、思い出せないときに私が実際にしている対処です。
今は困るほどではないが、将来への不安はある

今のところ大きな支障はなくても、この先のことを考えれば不安はあります。現在困っていないことと、将来を心配しないことは、私の中では別の話です。
老化や認知症のことを考えると少し怖い
物忘れがあるたびに落ち込んでいるというより、将来もし認知症になったり、その症状が進んだりしたときに、自分がどうなるのかを考えると不安になります。
先のことは分かりません。それでも、今より物忘れが進んだ自分を想像すると、少しの恐怖があります。ここで書けるのは、現在の私がそう感じているということです。
妻とは冷静に話せるが、医療機関にはまだ相談していない
妻とは、物忘れや将来について普通に話すことができます。
自分の物忘れについて、医療機関へ相談した経験はまだありません。これは現在の受診歴をそのまま書いたもので、物忘れが気になる人に受診の必要がないと伝える意味ではありません。相談を考える変化や相談先については、前の節で触れたとおりです。
深刻に考えすぎず、できるだけ明るく暮らしたい

将来への不安と少しの恐怖はあります。それでも、まだ起きていないことを必要以上に深刻に考え続けて、不安を大きくする必要はないと思っています。
先のことは誰にも分からない
先のことは誰にも分かりません。今後も今と同じ程度なのか、物忘れが増えるのか、別の変化が表れるのかを、今の時点で決めることはできません。
私は、まだ起きていないことを深刻に考え続けると、かえって落ち込んだり、不安になったりするだけで逆効果ではないかと考えています。これは医学的な効果を説明しているのではなく、先の分からない不安と付き合うための、現在の私の考えです。
もちろん、物忘れの変化に目を向けないという意味ではありません。困り方が変わったときに相談することと、今から必要以上に不安を膨らませないことは、両立できると思います。
明るく元気に生きようとする気持ちを持ちたい
笑うことは健康によいとも言われています。日本の高齢者を対象にした観察研究でも、笑う場面の多さと認知症発生リスク(英語)、笑う頻度と要介護状態の発生リスク(英語)との間に関連が報告されています。
ただし、これらは観察研究で確認された関連です。笑うことが認知症を予防する、笑えば健康になれるという因果関係や効果が証明されたわけではありません。
この記事で、笑うことを治療や予防の方法として勧めるものではありません。私が伝えたいのは、先のことを心配し続けるより、できるだけ明るく元気に生きていこうとする前向きな気持ちを持つことが大切ではないか、ということです。
よくある質問
Q:人の名前が出てこないだけで認知症ですか?
A:人の名前がなかなか思い出せないことは、加齢による物忘れでも見られます。それだけで認知症とは判断できません。認知症では、体験そのものを忘れる、手がかりがあっても思い出せない、日常生活や社会生活に支障が出るといった特徴が見られる場合があります。ただし、これらは典型的な違いであり、自分で診断するための基準ではありません。
Q:物忘れが気になるときは、どこへ相談できますか?
A:まずは、かかりつけ医へ相談できます。もの忘れ外来、脳神経内科、精神科、老年内科、認知症疾患医療センターなども選択肢です。どこへ相談すればよいか分からない場合は、認知症と診断される前でも地域包括支援センターへ相談できます。
Q:笑うことは認知症予防になりますか?
A:笑う場面の多さや笑う頻度と、認知症や要介護状態の発生リスクとの関連を示した観察研究はあります。しかし、笑うことが認知症を予防するという因果関係や、個人への効果が証明されたわけではありません。この記事では、笑うことを治療や予防の方法として勧めていません。
まとめ|不安を増やしすぎず、今の変化を冷静に見る

人の名前がすぐに出てこないことが増えると、単なる加齢による変化なのか、それとも認知症の兆候なのかと不安になります。今回、自分に起きている物忘れや対処を振り返って、改めて感じた要点は次のとおりです。
●この記事の要点
- 顔は分かっているのに名前だけが出てこないほか、約束や以前の会話、仕事で頼まれたことを忘れる場合もある
- 人の名前が出にくいことは加齢でも見られるが、それだけで認知症とは判断できない
- 名前が思い出せないときは、言い換える、素直に尋ねる、人やスマートフォンで確認する
- 物忘れの頻度や生活・仕事への影響が変わったときは、医療機関や地域の相談窓口へ相談する選択肢がある
- 将来への不安を増やしすぎず、今の変化を見ながら、できるだけ明るく元気に暮らしたい
今のところ、私の物忘れは仕事や日常生活で実際に困るほど頻繁ではなく、重要なことを忘れるほどひどい状態でもありません。ただ、すべてを年齢のせいにするのではなく、頻度や生活・仕事への影響が変わったときには、相談するという選択肢を持っておきたいと思います。
将来への不安と少しの恐怖はあります。それでも、まだ起きていないことを深刻に考え続け、不安を大きくするだけにはしたくありません。思い出せないときはその都度対処し、変化には目を向けながら、できるだけ明るく元気に暮らしていきたいと思っています。
※この記事は、カレギー本人の体験と現在の考えを中心にしたもので、認知症の診断や個別の医療助言を目的としていません。気になる変化や生活への影響がある場合は、医療機関や地域の相談窓口へ相談してください。詳しくは免責事項をご確認ください。
