介護疲れで気持ちが乱れるとき|自分を責めすぎない感情の整理方法

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介護疲れで気持ちが乱れるとき|自分を責めすぎない感情の整理方法

介護をしていると、排泄介助や着替えなど、すぐに対応が必要になる場面があります。自分の仕事や生活と重なる中で、焦ったり、苛立ちを感じたりすることもあるでしょう。

私は母の排泄介助で、母が便を手で触ってしまう場面に何度か対応しました。衣類や周囲に付く前に処置したくて、少し焦りました。苛立ちも全くなかったわけではありませんが、介護の仕事で似た場面を経験していたこともあり、ひどく取り乱さずに対応しました。

一方、母の介護では、「介護職なのだから、もっとできるはずだ」「弱音を吐いてはいけない」と考えることもありました。仕事で身につけた経験が役立つことと、家族の介護を日々続ける負担は、分けて考える必要があると思います。

この記事では、母を介助したときの実際の対応と、後から振り返るための考え方を整理します。

●この記事でわかること

  • 介護中に焦ったとき、安全と必要な対応を確認する視点
  • 母の排泄介助で私が感じたことと、実際にした対応
  • 介護職として自分に求めていたことと、家族介護の難しさ
  • 事実・感情・次の対応を分けて、後から振り返る考え方
  • 介護の負担を見直し、相談するときに伝えたいこと

ここで紹介する振り返り方は、私が当時使っていた方法ではありません。実際の経験と後からの提案を分けながら、その場の対応から、介護を続けるうえでの負担や相談先まで順に考えていきます。

介護で気持ちが乱れたときは、まず安全と必要な対応を確認する

介護で気持ちが乱れたときは、まず安全と必要な対応を確認する

介護をしていると、思いどおりに進まないことがあります。こちらが疲れているときや時間に余裕がないときにも、排泄や着替えなどの介助が必要になります。

そのような場面で苛立ちや焦りを感じたとき、私は、まず目の前で起きていることと必要な対応を見ることが大切だと考えています。気持ちについて振り返る時間は、介助が落ち着いてから取ることもできます。

苛立ちや焦りを感じることと、そのまま行動することは別

介護中に苛立ちを感じたからといって、それだけで自分を責める必要はないと私は思います。私自身も、母の排泄介助で少しの苛立ちや焦りを感じました。

ただ、感情が生まれることと、その感情のまま強い言葉や乱暴な行動を相手に向けることは別です。

「怒ってはいけない」と自分に言い聞かせるだけでなく、何に困っているのかも見てみます。汚れが広がりそうで焦っているのか、対応が重なって手が足りないのか。起きていることを具体的に見て、今必要な対応と、後で相談したいことを分けて考えるという方法です。

私の場合は、母にほかの場所を触らないよう伝え、必要な処置をしました。その対応については、次の節で詳しく振り返ります。

その場の安全と、今必要な対応を確認する

介助中は、本人の姿勢や動き、周囲の状況にも目を向けます。立っている人がふらついていないか、足元に通行を妨げる物がないかなど、汚れへの対応だけに注意が向かないようにします。

国立長寿医療研究センターの転倒防止セルフチェックでも、ふらつきなどの身体的な要因に加え、家の中の暗さ、通路に置かれた物、段差などが確認項目に挙げられています。

必要な介助の仕方は、本人の身体の状態や、その場の環境によって異なります。支え方や介助方法が分からない場合は、担当の専門職に、その人に合った方法を確認しておくことも必要です。

また、普段と違う様子があるときに、何でも「年を取ったから」と片づけないようにしたいと思います。いつから、どのように違うのかを、医療や介護の専門職へ伝えるための情報として整理します。

参考:国立長寿医療研究センター「高齢者のための転倒防止セルフチェック」

気持ちが高ぶったときは、交代や休止ができる状況を考える

怒りが強くなったとき、気持ちを抑えながら一人で対応し続けることだけが選択肢ではありません。ほかに対応できる家族などがいる場合は、事情を伝えて代わってもらう方法があります。

大和市の「認知症介護Q&A」では、同じことを繰り返し聞かれて苛立つ場面への回答として、対応する人を代わることや、一時的にその場を離れることが紹介されています。

ただし、これは排泄介助中の手順を示したものではありません。立位を支えている最中など、本人から離れると危険な場面へ、そのまま当てはめることはできません。

交代できる人がいるか、本人を一人にせず休止できるかなど、その場の条件を考える必要があります。安全に対応することが難しい状態なら、一人で続けることを前提にせず、対応できる人へ助けを求めます。

こうした場面が繰り返される場合は、その場をしのぐ工夫だけでなく、介助の分担や支援体制についても相談したいところです。

参考:大和市「認知症介護Q&A」

母の排泄介助で、私が少し焦ったとき

母の排泄介助で、私が少し焦ったとき

私が母を自宅で介護していたとき、特に大変だったのは、排泄と清潔を保つための介助でした。

排泄は、介護する側の予定に合わせて起きるわけではありません。仕事や自分の生活があっても、必要になれば対応しなければなりませんでした。

母が便を手で触ったとき、少し焦りながら処置した

排泄介助の際、母が便を手で触ってしまうことが何度かありました。衣類や周囲に付く前に対応したかったため、私は少し焦りました。

苛立ちが全くなかったと言えば嘘になります。ただ、ひどくイライラしたり、取り乱したりしたわけではありません。私の場合は、汚れが広がる前に処置したいという焦りがありました。

母には、手でほかの場所を触らないように伝えました。そのうえで、黙々と必要な処置をしました。

このときのことを振り返ると、少し焦りや苛立ちを感じていたことと、実際には必要な対応をしていたことの両方があります。どちらか一方だけにすると、その場面を十分に伝えられないと思います。

介護の仕事で経験していたことが役立った

介護の仕事では、同じような場面を何度も経験していました。その経験が、ひどく取り乱さずに対応する助けになったと思っています。

母への声かけや処置の前に、特別な気持ちの整理をしたわけではありません。仕事で似た場面を経験していたこともあり、必要なことを伝えて、そのまま対応しました。

介護職としての経験が、家族介護でも役立った場面でした。

一方で、介護の経験や、そのときの疲れ方、周囲から得られる助けは人によって異なります。私がこの場面で取り乱さなかったからといって、誰もが同じように対応できるとは限りません。

以前のようにできなくなることを受け止める

私が家族介護について伝えたいのは、まず怒ったりパニックになったりせず、起きていることに対応するということです。苛立ちや焦りを一切感じてはいけない、という意味ではありません。

私は、老いによって、それまでできていた排泄も以前のようにはできなくなることを、受け止めることが大切だと考えています。

以前は自分でできていたことでも、今は介助が必要になっている。その変化を見ながら、必要な対応を考えることになります。

ただし、これは排泄の問題をすべて加齢によるものと判断するということではありません。国立長寿医療研究センターは、高齢者の排尿の問題について、排尿機能だけでなく、認知機能や身体機能なども考慮した評価を示しています。日本泌尿器科学会も、尿失禁を年齢のせいと諦めずに相談するよう案内しています。

以前のようにできなくなったことを受け止めながら、困っている症状については専門職に相談する。その両方を大切にしたいと思います。

参考:国立長寿医療研究センター「高齢者の下部尿路機能障害」、日本泌尿器科学会「尿が漏れる・尿失禁がある」

介護で苛立ちや焦りが生まれても、自分を責めすぎない

介護で苛立ちや焦りが生まれても、自分を責めすぎない

介護の知識や経験があっても、家族の介護では疲れや苛立ちを感じることがあります。

私には、介護の仕事をしているからこそ、自分に求めていたこともありました。

「もっとできるはずだ」と考えていた

母の介護では、「介護職なのだから、もっとできるはずだ」「介護の仕事をしている自分が弱音を吐いてはいけない」と考えることがありました。

方法を知っていることと、それを日々の生活の中で十分に行えることは、同じではありません。仕事と母の介護が重なる中で、知識があるからといって、使える時間や体力が増えるわけではありませんでした。

振り返るときには、できなかったことだけでなく、実際に行ってきた介助や、そのときの生活条件も一緒に見たいと思います。

仕事の介護と、親の介護は同じではなかった

仕事として行う介護には、職務としての役割や勤務時間があります。同僚と協力して対応する場面もありますが、その体制は職場によって異なります。

家族介護では、食事、排泄、着替え、見守りなどが、自分の仕事や生活の中に入ってきます。

介護職としての経験が役立つ場面はありました。それでも、母の生活を支えるために必要な時間や、家族として感じることまでなくなるわけではありません。

「知識があるのにできない」と考える前に、どれくらいの介助を、どのような生活条件の中で担っているのかを見ることも必要だと思います。

感情が生まれたことだけで、介護のすべてを否定しない

介護中に苛立ったり焦ったりしたとき、その気持ちだけが強く記憶に残ることもあるでしょう。

振り返るなら、感じたことに加えて、実際に行ったことも見ます。何を手伝ったか、どのくらいの時間を使ったか、困った場面でどう対応したか、といったことです。

相手への言動に直したい点があれば、その具体的な行動を振り返ります。一度焦ったということから、自分の介護全体を否定する結論へ急ぐ必要はないと思います。

また、気持ちの問題として考えるだけでは見落とすこともあります。対応が一人に集中していなかったか、休む時間が取れていたかなど、介護の負担にも目を向けます。

介護のあとで、事実・感情・次の対応を分けて振り返る

介護のあとで、事実・感情・次の対応を分けて振り返る

私自身は、母が便を手で触った場面で、三段階の感情整理を意識して実践していたわけではありません。

ここからは、その経験を後から振り返るための整理案です。介助の最中に必ずこの順番で考えるという手順ではなく、落ち着いてから出来事を整理するときの一つの考え方として紹介します。

実際に何が起きたのかを整理する

まず、起きた出来事を書き出します。

私の場面であれば、「母が便を手で触った」「衣類や周囲に付く可能性があった」ということです。

この段階では、「自分は介護が下手だ」といった評価を、出来事そのものと分けます。また、母がなぜそのようにしたのか、本人に確認できない理由を決めつけないようにします。

いつ、どの場面で何が起きたのか。分かっていることを書き留め、誰かに相談するときに状況を伝えるメモとして使う方法もあります。

自分が何を感じたのかを確かめる

次に、そのとき自分が感じたことを振り返ります。

私の場合は、少しの苛立ちと、汚れが広がる前に処置したいという焦りでした。ひどい怒りやパニックとして書くと、実際の気持ちとは違ってしまいます。

人によっては、疲れや悲しさなど、別の気持ちが重なっているかもしれません。うまく言葉にできなければ、すぐに一つの感情へ決める必要もありません。

大切なのは、実際より強く表現することでも、感じなかったことにすることでもなく、自分に近い言葉で残すことだと思います。

実際の対応を振り返り、次に必要なことを考える

最後に、実際にした対応と、今後考えたいことを分けます。

私がしたのは、母にほかの場所を触らないよう伝え、必要な処置をすることでした。これは実際の行動です。

一方、「次は手伝いを頼めるだろうか」「この介助方法を専門職に確認したい」と考えることは、今後に向けた検討です。私がその場で行ったこととは区別します。

振り返る際の項目としては、例えば次のようなものがあります。

  • その場で実際に行ったこと
  • 対応に迷ったことや、一人では難しかったこと
  • 次に同じことが起きる前に確認しておきたいこと
  • 家族や専門職へ相談したいこと

すべてを一度に解決する必要はありません。相談したいことが一つ見つかったら、それを書き留めておくという使い方もできます。

この整理だけで気持ちが落ち着いたり、介護の負担が減ったりするとは限りません。負担が続く場合は、介護の体制そのものも振り返ります。

気持ちだけで耐えず、介護の負担そのものを見直す

気持ちだけで耐えず、介護の負担そのものを見直す

介護で何に困っているのかを考えるときには、介護される人の状態とともに、介護する側の生活も見ます。

誰がどの介助を担っているのか、対応が必要なのはいつか、仕事や睡眠とどう重なっているのか。気持ちの持ち方だけでは変えられない条件もあります。

「いつもの自分と違う」と感じたら負担を確認する

厚生労働省の「こころの耳」では、普段の自分を知り、いつもと違う自分に気づくことが、セルフケアの出発点として紹介されています。

これは働く人向けの情報ですが、自分の変化を振り返る視点として参考になります。

介護のある生活でも、以前より苛立つことが増えた、疲れが残る、休む時間が減ったなど、普段との違いを整理してみることはできます。これらは、この記事で挙げる振り返りの例であり、病気や介護疲れを判定するチェックリストではありません。

「まだ続けられるか」だけでなく、続けるために何を削っているのか、どの負担が増えているのかを見ることも必要だと思います。

参考:厚生労働省「こころの耳|セルフケア探偵」

ケアマネジャーには、介護者側の負担も伝える

担当のケアマネジャーへ相談するときは、本人の状態に加えて、家族が行っている介助や生活への影響も伝えます。

相談内容を整理するなら、次のような項目が考えられます。

  • 食事、排泄、着替え、見守りなど、家族が対応していること
  • 対応が必要な時間帯や、おおよその回数
  • 一人で対応することが難しい場面
  • 仕事や睡眠への影響
  • 現在利用している支援と、補えていない部分

「つらい」「もう無理」といった言葉が出てこなくても、起きていることを説明する方法はあります。「夜間の対応が増えた」「仕事で不在の時間に介助が必要になる」といった、相談者自身の具体的な状況です。

そのうえで、介護サービスや分担について相談します。実際に利用できる方法は、本人の状態や希望、地域の提供体制、利用条件などによって異なります。

厚生労働省の「仕事と介護の両立ポイント」でも、介護サービスについての相談や、ケアマネジャーに相談することが案内されています。

参考:厚生労働省「仕事と介護の両立ポイント」

地域包括支援センターも相談先になる

担当のケアマネジャーがいない場合や、相談先が分からない場合は、地域包括支援センターへ問い合わせる方法があります。

厚生労働省は、地域包括支援センターについて、保健医療・介護の相談を受け、関係機関と連携しながら必要なサービスや制度の利用につなぐ支援を行う窓口と説明しています。

窓口の名称は自治体によって異なることがあるため、分からなければ、お住まいの市町村の高齢者福祉担当窓口などで確認できます。

相談の内容は、現在の介護状況や、家族が困っていることからで構いません。施設入所を決めてから相談する必要はなく、どのような支援を検討できるかを確認するためにも相談できます。

焦りや苛立ちが生まれるたびに、自分の気持ちだけを直そうとするのではなく、負担が重なっていないかも見ていく。そのための相談先として考えたいと思います。

参考:厚生労働省「認知症に関する相談先」

よくある質問

Q:介護中に苛立ちを感じた自分を、どう考えればよいですか?

A: 苛立ちを感じたことだけで、それまで行ってきた介護のすべてを否定する必要はないと私は思います。感じたことと実際にしたことを分けて振り返り、直したい言動があれば、その具体的な行動を考えます。対応が一人に集中していなかったか、休む時間が取れていたかなど、負担にも目を向けます。

Q:介護中に怒りそうになったときは、どうすればよいですか?

A: 本人と周囲の安全を確認し、ほかに対応できる人がいれば交代を頼む方法があります。一時的に離れる場合も、本人を一人にしてよい状況かを考える必要があります。立位を支えている最中など、そのまま離れると危険な場面もあります。安全に対応することが難しいときは、一人で続けることを前提にせず、対応できる人へ助けを求めます。

Q:介護のあとで、気持ちをどう振り返ればよいですか?

A: 「何が起きたか」「どう感じたか」「実際に何をしたか」を分けて書き出す方法があります。そのうえで、次に確認したいことや、誰かに相談したいことを整理します。これは後から振り返るための一案であり、私が母の介助中に意識して使っていた方法ではありません。

Q:排泄がうまくできなくなるのは、老いによるものと考えてよいですか?

A: 加齢に伴って排尿機能が変化することはありますが、排泄の問題をすべて年齢のせいにすることはできません。私は、以前のようにできなくなったことを受け止めながら、困っている症状は専門職に相談することも大切だと考えています。本人の状態や普段との違いを伝え、その人に必要な対応を確認します。

Q:介護の負担について、どこへ相談すればよいですか?

A: 担当のケアマネジャーがいれば、本人の状態に加えて、家族が行っている介助や仕事・睡眠への影響も伝えます。担当者がいない場合や相談先が分からない場合は、地域包括支援センターへ問い合わせる方法があります。「もう無理」と言葉にできなくても、困っている場面や時間帯から説明できます。

まとめ|焦りへの対応と、介護の負担を分けて考える

まとめ|焦りへの対応と、介護の負担を分けて考える

母の排泄介助では、少し焦りや苛立ちを感じながらも、母に必要なことを伝えて処置をしました。仕事で似た場面を経験していたことが、対応の助けになったと思っています。

この記事で振り返ったことをまとめます。

  • 苛立ちや焦りを感じることと、その感情を相手への言動に表すことは分けて考える
  • 介助中は本人と周囲の安全を確認し、一人での対応が難しいときは協力を求める
  • できなかったことだけでなく、実際に行った介助や、そのときの生活条件も振り返る
  • 事実・感情・対応を分ける整理案は、介護のあとで振り返るために使う
  • 介助量や時間、仕事・睡眠への影響も確認し、必要に応じてケアマネジャーなどへ相談する

私は、老いによって以前のようにできなくなることを受け止める姿勢を大切にしたいと思っています。同時に、介護する側が担っていることや生活の条件にも目を向ける必要があります。その場で何をするかと、これからの介護をどう続けるかを分けて考え、相談したいことを整理していければと思います。

介護職としての知識が母の介護に役立ったことと、それでも十分にできなかったことについては、「介護職でも親の介護はつらい|仕事と家族で違った現実と教訓」で詳しく書いています。

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介助量や生活条件を踏まえて、介護サービスや支援体制を見直したい方は、「在宅介護がきついと感じたら|限界前に見直すサービスと選択肢」も参考にしてください。

在宅介護がきついと感じたら|限界前に見直すサービスと選択肢
在宅介護がきついと感じても、限界まで我慢する必要はありません。要介護3の母を約1年間介護した経験から、ケアマネジャーへの相談、在宅サービス、福祉用具、仕事との両立、施設という選択肢を整理します。
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