
親の介護が始まっても、生活のために仕事を続けなければならないことがあります。私は母を約1年間、自宅で介護しながら日勤と夜勤を続けました。しかし、介護休業や介護休暇、勤務時間の変更、夜勤の削減などは何も利用していません。制度の有無も知らず、人手不足のなかで正式に相談しにくいと感じていました。
退職を考えたことはあります。それでも生活費が必要で、現実に選べる方法ではありませんでした。考えていたのは、「どうすれば働きながら介護をできるか?」ということです。
まず、家族に必要な介助と仕事中にはできないことを整理し、勤務先には両立支援制度を、ケアマネジャーなどには介護サービスを相談します。
●この記事でわかること
- 両立を考える前に整理しておきたいこと
- 介護休業・介護休暇・勤務時間や夜勤に関する制度の違い
- 勤務先と介護側へ相談する順番
- 職場だけで解決しない場合と、両立が難しい場合の考え方
制度を使えば必ず両立できるわけではありません。それでも退職を決める前に確認できることはあります。私の経験と現在の制度を分け、何をどこへ相談すればよいかを説明します。
私は制度を何も使わず、母の介護と仕事を続けた

私は母を約1年間、自宅で介護しながら日勤と夜勤を続けました。介護休業、介護休暇、有給休暇、勤務時間の変更、夜勤の削減などは何も利用していません。勤務先に介護休業や介護休暇があるかどうかさえ知らず、会社から積極的に知らされた経験もありませんでした。
介護休業や介護休暇があるかどうかも知らなかった
介護職として働いていても、家族介護のために自分が利用できる制度は分かっていませんでした。制度を調べてから母の介護に向き合ったのではなく、食事や排泄の介助をしながら、目の前の生活をどう回すかを自分で考えていました。
正直言って、このブログを始めこの記事を書く段になって初めて「自分の勤務先にも休業制度のようなものがあるのかもしれない」ことを知りました。その時の私は、制度の有無も利用条件も知らないまま、利用しようという発想が全くありませんでした。
人手不足で相談しにくく、勤務も夜勤も変えなかった
私の勤務先は人手に余裕がなく、勤務を変えてほしいとは言いにくい状況でした。館長が人員のやり繰りに苦労する姿も見ていました。「何かあったら(勤務調整や変更を)お願いします」とは伝えましたが、正式に相談して制度の説明を求めたわけではなく、日勤も夜勤も続けました。
母の葬儀でも特別休暇は取れず、職員の協力を得て勤務を振り替えました。ただし、会社任意の慶弔などの特別休暇と、法律上の介護休業・介護休暇は別です(厚生労働省「特別な休暇制度とは」)。
退職は考えても、生活のため現実には選べなかった
仕事を辞めることを考えたことはあります。しかし生活費が必要で、介護に専念することはできませんでした。退職は頭に浮かんでも、現実に選べる方法ではなかったのです。
私が考えていたのは、「どうすれば働きながら介護をできるか?」でした。当時は制度や相談先を整理できていませんでしたが、同じように仕事を辞められない人には、退職を決める前に確認できることがあります。
働きながら介護に使った時間やお金については、「親の介護と自分の老後|働きながら母を介護した私の家計と時間」でも振り返っています。

最初に「必要な介助」と「仕事中にできないこと」を整理する

相談の前に、家族に必要な介助と、自分が仕事中にはできないことを書き出します。難しい書類を作る必要はありません。
食事・排泄・見守りなど、家族に必要なことを書き出す
母は料理や食事の温めができなくなり、私が食事を準備しました。トイレへの誘導や排泄介助もあり、出勤前に尿取りパッドをセットし、帰宅後に交換していました。仕事の日は食器をすぐ片づけられず、夏場は食べ物が傷むことも気がかりでした。
これらを「朝・日中・夜に必要なこと」「急に起きる可能性があること」に分けると、支援が必要な時間帯が見えます。
勤務時間と重なる介助、急な対応、家族だけでは難しいことを分ける
次に、毎日の介助、予定を立てられる通院や手続き、急な対応を分けます。私は対応できないときに姉へ頼み、デイサービスも利用しましたが、母が行きたがらず予定どおり利用できないこともありました。
「家族で何とかする」とまとめず、誰が、いつ、何ならできるかを分けることが、勤務先とケアマネジャーなどへ相談する土台になります。
家族での役割整理は、「兄弟の介護分担で揉めないために|役割・費用・支払い担当の決め方」でも詳しくまとめています。

相談の順番① 勤務先へ介護に直面したことを伝える

両立が難しくなったら、勤務先へ「家族の介護に直面している」と伝え、制度の説明を受けます。厚生労働省も、会社へ伝えて制度説明を受け、必要に応じて利用するよう案内しています(厚生労働省「仕事と介護の両立ポイント」)。
この記事で示す相談の順番は、法律で定められた唯一の手順ではありません。本人の経験と公的な案内を基に、退職を決める前に確認しやすい順序として整理しています。
事情だけでなく、仕事上困っていることを具体的に伝える
「親の介護が始まりました」だけでなく、仕事を続けるうえで困っていることを伝えます。
- 定期的な通院の付き添いが必要
- 始業前後や残業・夜勤の時間帯に介助がある
- 介護サービスの契約やケアマネジャーとの打ち合わせに時間が必要
- 急な連絡の際に勤務調整を相談する可能性がある
仕事との両立に影響する事実と、相談したい内容を整理して伝えます。
就業規則、相談・申出先、利用条件を確認する
上司へ伝えるだけで終わらせず、就業規則と、介護休業・介護休暇等の申出先を確認します。
- 利用できる制度と対象条件
- 申出方法、必要書類、期限
- 休業・休暇中の賃金の扱い
- 介護休業給付の相談先
対象条件は、雇用形態、契約期間、週の所定労働日数、労使協定などで変わる場合があります。定年後や有期雇用というだけで自分から対象外と決めず、勤務先へ確認します。
現在は個別周知・意向確認などが事業主に求められている
2025年4月1日から、事業主には両立支援制度を利用しやすくする雇用環境整備が義務づけられました。労働者が介護に直面した旨を申し出た場合は、制度、申出先、介護休業給付の個別周知と利用意向の確認も必要です。
労働者が40歳に達する日の属する年度、または40歳に達する日の翌日から1年間のいずれかの期間に、制度等の情報を提供することも求められています。すでに40歳を超えた全労働者への遡及通知という意味ではありません(厚生労働省「法改正のポイント」)。
私は制度を知らされなかったと感じていますが、当時の雇用条件や会社の対応をすべて確認できていません。勤務先の法違反を断定するのではなく、現在介護に直面している人は、制度と申出先を確認することが大切です。
相談の順番② 仕事を続けるための制度を目的別に確認する

両立支援制度は介護休業だけではありません。必要なのが長い休み、短時間の対応、勤務時間の調整のどれかによって、確認する制度が変わります。
介護休業は両立できる体制を整えるために使う
介護休業は、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある対象家族を介護するための休業です。対象家族1人につき通算93日、3回まで分割でき、原則として開始予定日の2週間前までに申し出ます。
93日間ずっと自分だけで介護するための制度ではありません。厚生労働省は、サービスの手配や家族分担など、両立体制を整える準備期間としての活用を案内しています(厚生労働省「介護休業」)。
父母は対象家族に含まれますが、雇用条件や労使協定による除外条件があるため、個別の利用可否は勤務先へ確認します。
介護休暇は通院の付き添いや手続きなど短い対応に使える
介護休暇は年次有給休暇とは別で、対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日まで、1日または時間単位で取得できます。通院の付き添い、手続き、ケアマネジャーとの打ち合わせなど、短い対応に使えます。
有給か無給かは勤務先の規程によります。日々雇用される労働者は対象外で、労使協定により週2日以下の労働者を除外する場合があります。2025年4月から、継続雇用6か月未満を理由とする除外は廃止されました(厚生労働省「介護休暇」)。
短時間勤務、残業免除・制限、深夜業制限も確認する
休むことだけでなく、働く時間を調整する制度もあります。
- 短時間勤務等:事業主は、短時間勤務、フレックスタイム、時差出勤、介護サービス費用助成などから少なくとも一つを設けます。対象家族1人につき、連続3年以上の期間に2回以上利用できる制度が必要です(厚生労働省「短時間勤務等の措置」)。
- 所定外労働の制限:要件を満たす労働者は、会社が定めた所定労働時間を超える労働の免除を請求できます(厚生労働省「所定外労働の制限」)。
- 時間外労働の制限:要件を満たして請求した場合、法定時間外労働は1か月24時間、1年150時間までに制限されます(厚生労働省「時間外労働の制限」)。
- 深夜業の制限:要件を満たして請求した場合、午後10時から午前5時までの深夜業を制限できます。同居家族の状況などによる対象外条件があります(厚生労働省「深夜業の制限」)。
私は夜勤削減を申し出なかったため、申請していれば減らせたとは言えません。ただ、夜勤と介護が重なる人は、深夜業制限の対象になるかを確認できます。
介護休業給付は支給条件と金額をハローワークへ確認する
雇用保険の被保険者が一定の要件を満たして介護休業を取得すると、給付額は原則「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で算定されます。
ただし、給与の67%を必ず受け取れるわけではありません。上限、休業中の賃金、就労日数、被保険者期間、契約条件などで変わります。職場復帰が前提で、休業開始時から退職予定の場合は対象になりません。
個別の支給可否や金額は、厚生労働省「Q&A~介護休業給付~」を確認し、ハローワークへ相談します。
相談の順番③ ケアマネジャーなど介護側の窓口にも相談する

勤務先の制度確認と介護サービスの調整は、並行して進めます。仕事中の介護を誰がどのように支えるかも必要だからです。
担当ケアマネジャーがいる場合は、仕事中の支援方法を相談する
担当のケアマネジャーがいる場合は、「仕事を続けたい」「この曜日や時間帯は家族が対応できない」と伝え、仕事中の支援方法を相談します。検討できるサービスは、介護を受ける本人の状態や希望、利用条件によって異なります。勤務先には雇用制度、ケアマネジャーには介護サービスというように、相談内容を分けます。
担当者がいなければ地域包括支援センターか市区町村へ相談する
担当者がいなければ、地域包括支援センターまたは市区町村の介護保険担当窓口へ相談します。厚生労働省も、日常生活や介護は地域包括支援センター、介護保険手続きは市区町村を相談先として案内しています(厚生労働省「その他・相談窓口」)。
制度、介護サービス、家族分担を組み合わせる
私は対応できないときは姉に頼み、デイサービスも利用しました。しかし、誰かに順序立てて相談し、勤務先の制度と介護サービスを組み合わせたわけではありません。
現在なら、介護休業中に今後の体制を整え、その後は介護休暇や勤務時間の調整とサービスを組み合わせる方法も検討できます。組み合わせは、本人の状態や希望、家族、勤務条件によって変わります。
職場で解決しない場合と、それでも両立が難しい場合

制度の説明を受けられない、対象外と言われた理由に疑問があるなど、職場だけで解決しない場合は外部窓口へ相談します。
制度の説明や扱いに疑問があれば労働局へ相談する
育児・介護休業法や両立支援制度は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が相談窓口です。制度の申出や取得を理由とする解雇、雇止め、降格などは禁止され、事業主にはハラスメント防止措置も求められます。
個別の会社対応が法律に違反するかは、雇用契約、就業規則、申出の内容や時期などを踏まえた判断が必要です。一般的な説明だけで決めつけず、実際の条件を伝えて相談します。
給付はハローワーク、介護サービスは介護側の窓口へ確認する
介護休業給付はハローワーク、介護サービスや介護保険手続きは地域包括支援センターや市区町村へ確認します。相談先の役割は、厚生労働省の相談窓口案内でも確認できます。
勤務形態や施設利用を含めて介護の担い方を見直す
制度やサービスを組み合わせても両立が難しくなることはあります。私の場合、母が食事や排泄を自分で行えなくなり、仕事との両立が難しいと判断して老健を利用しました。介護休業を使えば施設利用を避けられた、と断定できることではありません。
勤務時間、家族分担、在宅サービス、施設利用など、介護の担い方を見直す必要があります。退職も施設利用も、一律に失敗とはいえません。
この記事でいう「介護離職を避ける」とは、どんな状況でも辞めないという意味ではありません。退職の前に制度、介護サービス、家族の協力、収入への影響を確認し、続けられる方法が残っていないか確かめることです。
よくある質問
Q:介護と仕事の両立が難しくなったら、最初にどこへ相談すればよいですか?
A:まず、家族に必要な介助と、仕事中にはできないことを整理します。そのうえで、勤務先へ介護に直面していることを伝え、両立支援制度と申出先を確認します。同時に、担当のケアマネジャーへ介護サービスを相談してください。担当者がいなければ、地域包括支援センターまたは市区町村の介護保険担当窓口が相談先です。これは法律で決められた唯一の順番ではなく、退職前に確認しやすい順序として整理したものです。
Q:介護休業と介護休暇は何が違いますか?
A:介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割でき、介護サービスの手配や家族分担など、両立体制を整える期間として利用できます。介護休暇は年次有給休暇とは別で、対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日まで、1日または時間単位で取得できます。有給か無給かは勤務先の規程によります。どちらも対象条件があるため、勤務先へ確認してください。
Q:親の介護をしている場合、夜勤を減らしてもらえますか?
A:要件を満たす労働者が請求した場合、午後10時から午前5時までの深夜業を制限できる制度があります。ただし、介護をしていれば自動的に夜勤が減るわけではなく、同居家族の状況などによる対象外条件もあります。就業規則と申出方法を勤務先へ確認する必要があります。私は母の介護中、夜勤削減を申し出ていないため、当時利用できたとは断定できません。
Q:定年後や再雇用でも介護休業などを利用できますか?
A:定年後という年齢だけで一律に対象外になるとは限りません。一方で、雇用形態、契約期間、週の所定労働日数、労使協定などによって対象条件が変わる場合があります。私は当時の雇用条件や会社規程を確認していないため、自分が利用できたかは分かりません。勤務先の担当窓口へ個別に確認してください。
Q:勤務先で制度を説明してもらえない場合はどうすればよいですか?
A:育児・介護休業法や両立支援制度については、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談できます。介護休業給付の支給条件や申請はハローワーク、介護サービスや介護保険手続きは地域包括支援センターや市区町村が確認先です。会社の対応が違法かどうかは一般的な説明だけで決めつけず、雇用契約、就業規則、申出内容などの実際の条件を伝えて相談します。
まとめ|退職を決める前に、仕事側と介護側へ相談する

介護と仕事の両立が難しくなったときは、退職だけを先に決めるのではなく、現在利用できる制度と介護サービスを確認します。相談の前に困りごとを具体化しておくと、勤務先と介護側の窓口へ伝えやすくなります。
- 家族に必要な介助と、仕事中にはできないことを時間帯ごとに整理する
- 勤務先へ介護に直面していることを伝え、制度、申出先、対象条件を確認する
- 介護休業・介護休暇だけでなく、短時間勤務、残業・深夜業の制限、介護休業給付も目的に合わせて確認する
- ケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村へ介護サービスを並行して相談する
- 職場だけで解決しない場合は労働局やハローワークへ相談し、勤務形態や介護の担い方も見直す
私は制度を知らないまま、勤務を変えずに母の介護を続けました。制度を利用すれば必ず両立できるわけではありませんが、退職を決める前に、制度、サービス、家族の協力、収入への影響を確認することはできます。どの選択をする場合も、自分と家族が続けられる方法を考えるための材料になります。
まずは、家族に必要な介助と「自分が仕事中にはできないこと」を書き出してみてください。次に、勤務先の相談窓口と、ケアマネジャーなど介護側の相談先を一つずつ確認することから始められます。
