
「最近、ちょっとした段差でつまずくようになった」
「親の足腰が弱ってきたようで心配」
こうした変化をきっかけに、高齢者向けのロコモ体操を探している方もいるでしょう。一方で、片脚立ちやスクワットを見て「転ばないだろうか」「膝を痛めないだろうか」と不安になるのは自然なことです。
私はアラセブ(70代手前)の現役介護職として、高齢者の方と日々接しています。自分自身も年齢による体の変化を感じるようになりました。
高齢者がロコモ体操を行うときに大切なのは、無理に回数や時間を達成することではありません。安定した机や椅子を支えにし、その日の体調に合わせて行うことです。
この記事では、日本整形外科学会が紹介するロコトレをもとに、片脚立ちとスクワットの安全なやり方、始める前の注意点、現場で感じる続け方の工夫を分かりやすく紹介します。
運動を始める前に
強い膝・腰の痛み、めまい、息切れ、胸痛がある方、転倒経験がある方、治療中の病気がある方は、自己判断で始めず医師や理学療法士などに相談してください。運動中に痛みや体調不良を感じた場合は中止してください。
ロコモとは「移動する力」が低下した状態
が衰え、要介護に至る負の連鎖を示す図解(スマート・ライフ・プロジェクトの資料を引用・参考)】-1200x655.jpg)
ロコモは「ロコモティブシンドローム」の略です。日本整形外科学会は、運動器の障害によって移動機能が低下した状態と説明しています。
運動器とは、骨、関節、筋肉、神経など、体を動かす仕組み全体のことです。どこかに不調があると、立つ、歩く、階段を上るといった日常動作に影響することがあります。
ロコモが気になる場合は、早い段階から自分に合った運動を生活へ取り入れることが大切です。ただし、痛みやふらつきの原因には病気が隠れていることもあるため、無理に運動だけで解決しようとしないでください。
7つのロコチェックで日常生活を振り返る

日本整形外科学会は、日常生活を振り返る「7つのロコチェック」を紹介しています。
- 片脚立ちで靴下がはけない
- 家の中でつまずいたり、滑ったりする
- 階段を上るのに手すりが必要である
- 横断歩道を青信号で渡りきれない
- 15分くらい続けて歩けない
- 2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
- 掃除機の使用や布団の上げ下ろしなど、家のやや重い仕事が困難である
1つでも当てはまる場合は、ロコモの心配があるとされています。ただし、ロコチェックだけで病気を診断するものではありません。痛みがある、歩行が急に難しくなった、転倒を繰り返すといった場合は、整形外科などへ相談しましょう。
高齢者向けロコモ体操の基本は2種類
日本整形外科学会が紹介している基本のロコトレは、「片脚立ち」と「スクワット」の2種類です。
公式の説明でも、片脚立ちは転倒しないようにつかまるものがある場所で行い、支えが必要な人は机に手や指をつくよう案内されています。スクワットも、必要に応じて机に手をついて行います。
つまり、支えを使うことは自己流の妥協ではありません。安全に続けるための正式な方法の一つです。
椅子や机を使った片脚立ちのやり方

- 転倒してもぶつかる物がない、平らな場所を選びます。
- 動かない机や手すりのそばに立ちます。
- 必要に応じて両手または片手で支えます。
- 片方の足を、床につかない程度に上げます。
- ふらつく前に足を下ろし、反対側も行います。
公式の目安は左右1分間ずつを1セットとして1日3セットですが、最初から時間を達成する必要はありません。数秒でも不安を感じたら足を下ろし、安全を優先してください。
支えに使わない方がよい物
キャスター付きの椅子、軽い折りたたみ椅子、滑りやすい家具などは、体重をかけたときに動く可能性があります。壁に固定された手すりや、押しても動かない安定した机などを選びましょう。
机や椅子を使ったスクワットのやり方

- 足を肩幅より少し広めに開き、つま先をやや外側へ向けます。
- 必要に応じて、安定した机に手をつきます。
- 椅子に腰掛けるように、お尻をゆっくり後ろへ引きます。
- 膝がつま先と同じ方向を向くように意識します。
- 深くしゃがまず、無理のない位置からゆっくり戻ります。
公式の目安は、深呼吸をするくらいのゆっくりしたペースで5~6回を1セットとして1日3セットです。できない場合は、机に手をついて立ち座りの動作を行う方法も公式サイトで紹介されています。
回数よりも、痛みがなく安定して動けることを優先しましょう。膝や腰に痛みがある場合は、医療機関へ相談したうえで行ってください。
運動中は息を止めない
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力を入れるときに息を止めると、血圧が変動することがあります。日本整形外科学会も、スクワット中は息を止めないよう注意を促しています。
「立つときに息を吐く」「声に出してゆっくり数える」など、自分が呼吸を続けやすい方法を選びましょう。
私は介護現場で、参加者が楽しめるように歌を取り入れることがあります。歌を口ずさむことは、呼吸を意識し、楽しく続けるきっかけにはなります。ただし、歌えば血圧上昇や事故を防げると保証されるものではありません。歌うこと自体が負担になる方もいるため、息切れやめまいがあれば中止してください。
ロコモ体操を安全に行う7つの注意点
- 体調が悪い日は行わない
- 強い痛みがある場合は医療機関へ相談する
- 滑りにくい床と動きやすい服装で行う
- キャスター付き椅子など動く物を支えにしない
- ふらつきがある人は一人で行わない
- 運動中に息を止めない
- 痛み、めまい、胸痛、強い息切れが出たら中止する
介護施設で行う場合は、利用者それぞれの病歴、運動制限、歩行状態を確認し、施設の看護職やリハビリ専門職などと相談して実施してください。
無理なく続けるための考え方
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若い頃と同じように動けないことを、恥ずかしく思う必要はありません。机に手をつく、回数を減らす、休憩を入れることは、安全に続けるための調整です。
毎日の実施が難しければ、まずは生活の中で無理なくできるタイミングを探しましょう。「必ず決めた回数をこなす」と考えるより、その日の体調を確認しながら続ける方が現実的です。
ただし、運動量を減らした方がよいのか、別の運動が適しているのかは一人ひとり異なります。特に痛みや歩行障害がある場合は、専門家から個別の指導を受けることをおすすめします。
公式資料でやり方を確認する
日本整形外科学会の公式サイトでは、ロコトレの方法を図入りで確認できます。記事だけで判断せず、公式の説明もあわせてご覧ください。
なお、以前の記事で「椅子を使ったロコモ体操チェックシート」と紹介していたPDFは、実際には「ロコモ度テスト結果記入用紙」でした。運動方法の資料ではないため、リンクを公式のロコトレPDFへ変更しています。
よくある質問
Q.片脚立ちは、必ず1分間続けなければいけませんか?
A.1分間は公式の目安ですが、安全にできることが前提です。ふらつく場合は机などにしっかりつかまり、短い時間から始めてください。転倒の不安が強い方は、医師や理学療法士などに相談しましょう。
Q.膝に痛みがあってもスクワットをしてよいですか?
A.痛みが強い場合は運動を中止し、医療機関へ相談してください。痛みの原因や状態によって適した運動が異なるため、自己判断で負荷をかけないようにしましょう。
Q.歌いながら体操すると安全ですか?
A.歌は呼吸を意識し、楽しく続ける工夫にはなりますが、安全を保証するものではありません。歌うことで息苦しくなる方もいます。体調に合わせ、無理のない方法を選んでください。
まとめ:支えを使い、自分の体調に合わせて行う

高齢者向けのロコモ体操では、回数やきれいなフォームを無理に追い求めるより、安全な環境を整えることが大切です。
- 動かない机や手すりを支えにする
- 片脚立ちは床から少し足を上げるところから始める
- スクワットは深くしゃがまず、ゆっくり行う
- 運動中は息を止めない
- 痛みや体調不良があれば中止する
私自身も、昔の自分と比べず、その日の体の状態を受け入れることを大事にしています。できる範囲から始め、心配なことがあれば専門家に相談しながら、無理のない形で体を動かしていきましょう。
